カフェきごさいネット投句(三月) 飛岡光枝選
卒業す石蹴りながら帰り道 周作
毎日石を蹴りつつ帰った通い路とも今日でお別れ、などと説明するととたんにつまらなくなる。「石蹴りながら帰り道」に「卒業」がありありと現実のものとなったのだ。
うぶすなの土から土へ菊根分 隆子
「うぶすなの土」は菊ならでは。今年も大切に育てる菊。
【入選】
チェホフを閉じてせまれる余寒かな 弘道
「余寒あり」としっかりと止めたい。この形の句は多いが「せまれる」に実感がある。
病癒ゆ友の家訪ふミモザ咲く 弘道
動詞が多く、ぶつぶつ切れてしまった。「病癒えし友の家訪ふ花ミモザ」。
根分けして菊すこやかや實の忌 隆子
飴山實氏に「低吟のとき途絶ゆるや菊根分」「身のうちの邪気をふまへて菊根分」の句がある。
妹は姉より強し雛の家 涼子
「雛の家」では句が意味不明になってしまう。「妹は姉より強し雛飾る」。
忘れな草マドンナの来るクラス会 涼子
「マドンナの来るクラス会」は面白いが「クラス会」と「忘れな草」では付きすぎ。「スイートピーマドンナの来るクラス会」などなど、一番合う季語を探すこと。
【今月の投句より】
「どつしりと湯呑茶碗や浮寝鳥」
・「どっしり」と、浮寝鳥の「ふらふら」の対照を面白いと作られた句だと思うが、内容が無ければ俳句にはならない。
「菜の花の花ほろにがし辛子和え」
・料理の説明になってしまった。「菜の花の花ほろにがし」を生かし「下五」で世界を開く。原句は始めの始め、ここから作っていく。
「白山はいまだしろたへ飴山忌」
・「いまだ」はこの句では「いまも」「けふも」がいい。辞書には「いまだ」の意味として「今もなお」「前のままで」とも載っているが、否定形でつかう「いまだ~ない」のニュアンスが感じられるからかもしれない。「しろたへ」は「白山」の形容としては合わない。